「女性っていうものは…生命(いのち)を作り、生命(いのち)を本当に育てて行く、素晴らしい役目を持ってるんじゃないかな。下手な男女同権論よりも、私は、この、女性の持ってるね、独自性を考えた方が良いと思う、ね。
よく私は言います。女性っていうものは、海徳(かいとく)を持っている。あるいは、土徳(どとく)を持っている。これは別に…中国の本に書いてあったわけでもなければ、西洋の本に書いてあったわけではない。私が創った言葉です。
どういう意味かと言いますと、海というものを考えてみましょうね。海は洋々として広いです。大きいですね。豊かな水でもって、こう、溢れるばかりです。…
海はね、いろんな川が行きます。鬼怒川も入るね、那珂川も入るな。いろいろな川が入ります。汚い墨田川も入りますの。…荒川も入る。江戸川も入る、みんなね。汚いものも入れるけれど、海はそれを、全てを入れますね。違うかな? そしてそれは自然な浄化作用。その汚いものを綺麗にして行く作用がある、ね。そういう素晴らしい作用があるんですよ。
しかも、面白いことは…初めてこの地球に生物ができたのは、海の中なんですよ、ね。海の中にできたの。海の中で初めて生物の形成ができたの。段々段々、だから、お魚になったり、両生動物になったり、それから陸上動物になって来てるわけ。そして人間も生まれるわけ、ね。そのね、そういう生命の、生命(いのち)の素なの。
で、面白いことに…人間はです、その生物ができたのと同じようなことを繰り返している。例えばね、今のこの精子とね、卵子の結合にしてもそうなの。あれは、ひからびたところでできるんじゃないの。卵管の中はね、非情に潤ってるわけ。その中で、成分的に言えば、非常に海の水に近い、その成分の中で結合してる。そしてさらに、その結合ができますと、自ずから、一番小さいね、子どもですね。子どもの素みたいなもんだけど、それがね、お魚そっくりなの。そうしてね、羊水と言いましてね、その成分は海の水とほとんど同じような、その成分の中でそれが育って行くの、ね。あなた方は、だから、自分のお腹の中に海を持ってる。その海が生命を育てたように、あなた方はその生命(いのち)を育てているわけ。面白いんですよね。その生命(いのち)を育てるということ、その意味で、海(かい)、海と同じだと。それから、いろいろなね、その、汚いもの、いろんなものを、全てべ、入れてると、こういうとこで、私は女性に素晴らしさがあると思う。
だから、良いですか、自分の…子どもだとか、ね、夫にしてもそうなの。そりゃあ、イヤなとこ、あるでしょう。私、ああいうところ、嫌い!大っ嫌い!なんてことをね、あんまり言わないでほしいんですよ、ね。それはあなた方の海を、海徳を汚すことになるの、ね。良いことも悪いことも全て無条件に受け入れる。そういう態度であってほしいと思うんです、ね。これができますとね、あなた方の家庭は、素晴らしくね、なるんですよ。憎しみとか、差別、この子どもは可愛くて、この子どもはいけない、そういう差別、そうしたことを、海のように全てを無条件に、差別することなく、汚い墨田川も、綺麗な鬼怒川も、全てを受け入れて行く。この広さを持っていただけたらと思うんです、ね。…
では、土徳とは何でしょう、ということになる。そうしますと、それは土を観ましょう、大地を。大地はいろいろなものに踏んづけられますね、こう、ね。あなた方の足でも踏み付けられるし、猫はおしっこするし、いろんなことしますね。それだけれども、この大きな建物が、しっかりした建物が建つっていうのは、どこの上なんでしょうね。大地の上じゃないですか。もし大地がなかったら、この建物ができますか。そうして、しかもその大地は、今言ったように、いろんな汚いものも入れるんです。唾(つば)を吐く人もいるし、いろいろある。けれどもそれを全部ね、肥料に変えて、そこで木だとか、お米だとか、いろんなものを育てるでしょ。全てのものをやはり差別しない。じっと耐える、全てを背負って。そしてその上に大きな生命を、建物を創る。これを私は土徳という。それをあなた方は持ってるっていうことを忘れないでほしいと思います、ね。」(近藤章久講演『心を育てる』)
母なる海、母なる大地。
これを「父なる」とは言わないんです。
だから、我々はどこかでわかっているんです、女性に与えられた大いなる特性のことを。
それを是非とも発揮していただきたいと思う。
「海徳」「土徳」の「徳」というのは「働き」という意味です。
さらに言えば、「その人(物)を通して働く力」のことを「徳」と言うのです。
ですから、「海徳」「土徳」を発揮するには「自力」ではダメなんです。
女性を通して働く力=「他力」によって発揮させていただく。
そうなるとやっぱり、自力でウンウン頑張るのではなく、祈っておまかせするしかありません。
そうして初めてあなたを通して海と大地の働きが現れて来ることになるのです。