以下は、いわゆる神経症圏の方に対する薬物療法のお話。
しっかりとした薬物療法の継続が極めて重要な、いわゆる精神病圏の方には当てはまらないので、誤解なきように。
例えば、不安障害の患者さんがいらしたとする。
パニック発作などの不安にとても耐えられず、精神科を受診された。
そして処方された薬が著効し、不安が起きなくなった(あるいは、不安が起きてもすぐに服薬で対処できるようになった)。
大変喜ばしいことである。
しかし、ひとつ問題が起こる。
薬によって不安を解消できたのは良かったが、そのせいで、不安が起きる根本について自分の内面を見つめなくても済むようになってしまったのである。
そのため、ずーっと薬を飲み続けることになってしまうかもしれない。
実際、何十年も薬をもらいに通っている方々がいらっしゃる。
ご本人がそれで良いのなら良いのだけれど、完治への道もあることは御存知なのかしらんと思う。
反対に、敢えて薬物療法を使わず、薬を飲まないで、自分自身の内面を徹底的に見つめて行こうとする方も(稀に)いらっしゃる。
なるほど、そのやり方なら、根本的な完治に至る可能性がある。
しかし、その姿勢は立派ではあるけれど、鉄の意志と鬼の根性で耐えるには、不安が強烈過ぎる場合もある。
そういうときは、せめて薬物療法を併用して、薬でちょっと気持ちの余裕を作りながら、内省を進めて行くのが一番良いんじゃないかと私は思っている。
薬は使いようである。
折角、製薬会社の人も一所懸命に創って下さっているのだから、必要な方は賢明に活用するのが良いと思う。
しかし、使いようを間違えると、対症療法が成功して根本療法が行われなくなってしまう、という危険性があることを知っておきたい。
ちなみに今、八雲研究所に面談に来られている方は、治療対象の方ではないので、全員薬なしで、しんどいときもヒーヒー言いながら、自分と向き合って行きましょう。