今日は新年度最初の「八雲勉強会」。
令和6年度4月から構成を変えて、(1)近藤先生の文献を使った精神療法に関するレクチャー(2)参加者による話題提供とディスカッションという(1)+(2)2本立てとした。
ついては(1)の内容として、まず「ホーナイ派の精神分析」を取り上げる。
今までもホーナイ全集をはじめ、いろいろな文献を取り上げて来たが、今回、折角よくまとまった文献を使うので、読者諸氏とも共有したいと思い、ここにその内容を掲載した。
非常に濃縮された文章であるが、ホーナイ派の精神分析に関心のある方々のご参考になれば幸いである。
(以下、表記に多少古いものも含まれるが敢えてそのままに掲載した。また斜字は私の加筆である)
 

A.Horney(ホーナイ)学派の精神分析

1.人間の成長 ー「真の自己」の実現

Freud(フロイド)正統派の伝統の中に育ち、褒貶(ほうへん)をものともせず心的現実への追求を果敢に行った Freud の態度に惜しみない尊敬をささげながら、Horney もまた Freud に劣らない厳正さで心的現実を直視し、患者との長い臨床経験と不断の自己分析の経験を検討することによって Freud と全く異った見解に到達した。
彼女の明るい洞察の眼は、人間の存在の中に、常に実現を求めて止まない成長と発展への衝動を発見し、その源泉として「真の自己(real self)の概念を定立(ていりつ)したのである。この様な成長と発展への能力は、あらゆる人間に存在し、その素質や環境に応じて、各々の独自性に輝きながら、各自の「真の自己」を実現して行くものなのである。
(あたか)も樫(かし)の実が大木に成長する可能性を何時もはらんでいる様に、人間は、常に「真の自己」を実現して行く能力を持っているのである。しかし、人間も生体として、他の生物がそうである様に、生長して行く為に良好な環境条件を必要とする。
人間は、自分の感情や考えを生かし、自分を表現し得る内的な自由と安全を与えてくれる、自己実現の為の暖い環境が必要なのである。人々も好意や、協力や、指導、忠告、激励等が、どんなに私達が成熟した安定した人間になる為に必要なことであろうか。
また私達には一方に、他の人々との意見の交換や競争やその他の健康な刺激が成長に必要でもある。この様な関係に於(おい)て、私達は相共に人間として共感し合いながら、それぞれ独自の成長を遂げる事が可能となるのである。

 

 

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