2014(平成26)年7月4日(金)・5日(土)『生死(しょうじ)を目の前にしている方へ』
地獄鬼畜の くるしみは
いとへども又 受(うけ)やすし
…
おもひと思ふ ことはみな
叶(かな)はねばこそ かなしけれ
…
煩悩すなはち 菩提(ぼだい)ぞと
聞(きき)て罪をば つくれども
生死(しょうじ)すなはち 涅槃(ねはん)とは
いへども命を をしむかな
自性(じしょう)清浄(しょうじょう) 法身(ほっしん)は
如如(にょにょ)常住(じょうじゅう)の仏なり
迷も悟も なきゆゑに
しるもしらぬも 益ぞなき
…
別願超世の 名号は
他力不思議の 力にて
口にまかせて となふれば
声に生死の 罪きえぬ
…
おもひ尽きなん 其(その)後に
はじめをはりは なけれども
仏も衆生(しゅじょう)も ひとつにて
南無阿弥陀仏とぞ 申(まうす)べき
はやく万事を なげ捨(すて)て
一心に弥陀を 憑(たのみ)つゝ
南無阿弥陀仏と 息たゆる
是(これ)ぞおもひの 限(かぎり)なる
…
独(ひとり)むまれて 独死す
生死(しょうじ)の道こそ かなしけれ
…
人の形に 成(なり)たれど
世間の希望(けもう) たえずして
心身苦悩 することは
地獄を出(いで)たる かひぞなき
物をほしがる 心根は
餓鬼の果報に たがはざる
迭(たがい)に害心 おこすこと
たゝ畜生に ことならず
…
生老病死(しょうろうびょうし)の くるしみは
人をきらはぬ 事なれば
貴賎高下(きせんこうげ)の 隔(へだて)なく
貧富ともに のがれなし
露の命の あるほどぞ
瑶(たま)の台(うてな)も みがくべき
一度(ひとたび)無常の 風ふけば
花のすがたも 散(ちり)はてぬ
…
畳(たたみ)一畳(いちじょう) しきぬれば
狭(せばし)とおもふ 事もなし
念仏まうす 起(おき)ふしは
妄念おこらぬ 住居(すまい)かな
道場すべて 無用なり
行住坐臥(ぎょうじゅうざが)に たもちたる
南無阿弥陀仏の 名号(みょうごう)は
過(すぎ)たる此(この)身の 本尊なり
合掌
『一遍上人語録』より