2017(平成29)年12月5(火)『行く道 〜 持って行って下さい』
ある女性。
自分に対してひどく当たって来た母親は疾(と)うに認知症になってしまい、入所を拒否して自宅介護。
DV夫とは離婚し、シングルマザーとして働いている。
中学生の息子は、不登校で引きこもり。
そして今回、自身に乳癌が見つかった。
もう死んでしまいたいような気持ちになった。
周囲を見れば、そういうような状況になっても、平気そうにしている人もいる。
しかし、その多くは感覚麻痺を使って感じないようにしているだけで、苦悩は確実に心の底に澱(おり)のようにたまっている。
つくづく思う。
我々が苦悩を抱えられる容量はそんなに大きくない。
だから自分で抱えない方が良い。
信頼できる人とつながって話し、苦悩を軽減することも、もちろんお勧めだけれど、
私は人間を超えたものに全部持って行ってもらう、抱えてもらうのが一番良いと思っている。
我々の仕事でも、患者さんの凄まじい被虐待体験、犯罪被害体験、被災体験などの心的外傷(トラウマ)体験を聴いているうちに、“二次受傷”を生じることがある。
そんなときも自分の小さな容量の中に抱えようとするから潰れて行くのである。
かと言って、感覚麻痺を使って聞いていては、患者さんの苦悩は感じ取れないし、役にも立てない。
ちゃんと感じて潰れないためには、やはり人間を超えたものに持って行ってもらう、抱えてもらう必要があるのだ。
だから祈る。
己(おのれ)を空(むな)しゅうして、我(が)を空しゅうして、祈るのである。
そうすると何事が起きても、なんとかなるんだよ、本当に。