2014(平成26)年8月14日(木)『いじめ体験』
精神科面接の基本として、“生育史”や“現病歴”に関する問診がある。
幼少期から家庭や職場で体験したこと、感じて来たことを伺うわけであるが、
最近、欠かすことのできない聴取内容として、学校時代の「いじめ体験」の有無がある。
子どもの頃の体験といっても、本人にとっては存在のプライドに関わる重要な問題なので、伺うにあたっては細心の注意を要する。
そして、その体験は、時に“トラウマ”と呼ぶに相応(ふさわ)しいほど大きな影響をその人のその後の人生に与える。
だから、十分な時間をかけて、少しずつ、丁寧に、そして、可能な限り徹底的にその傷を癒やしていく必要がある。
しかし、その影響に押し切られ、人間が堕ちてしまったら、人間が擦れてしまったら、人間が卑怯になってしまったら、その人自身が他人を巻き込み、傷つけるようになってしまったら、「治療」の対象となる。
もちろん、そこからでも十分リカバリーできるけれど、そうなる前に、私のテリトリーである「成長」の範囲内のうちに、傷口を癒やしておいた方が良いと切実に思う。
女性は女性で、男性は男性で、非常に言い出しにくい傷もある。
「焦って」「無理に」とは絶対に思わないけれど、
向き合えるその“とき”が来たら、力になりたいと思っている人間がいることだけはどうか覚えておいてほしいと思う。