「最近、いろいろな理由で動物性の食物を食べる傾向が増えてきていますから。どうしても女の子も体を動かし筋肉を使いたくなります。ですから運動させることが必要です。…また男の子の場合も、思春期の前にしつけておきたいのは、労働をさせることです。ちょうど体を動かしたくなる頃です。『勉強しろ、勉強しろ』と一日中、体を動かさないで勉強させていますが、これはよくありません。体を使っていろんなものを修繕させたり、責任を持ってお使いをさせたりする。例えば父親や母親を代表して、その代りに他家に使いにやるといいと思います。
いまは余りに勉強部屋に閉じこめすぎています。ちょうど湧き起こってくるエネルギーや、発達してくる筋肉を単に攻撃的に使わないで、建設的なことに使うようにしてほしいのです。そのために労働させてほしいと思います。働くこと、責任を持って仕事をすることには、やりとげる喜びが伴います。そういう喜びを子どもに感じさせてもらいたいと思います。…
ただ子どもに命令して労働させようとすると、『なんでこれを俺はやらなくちゃならないの』ということになります。そこで、代表してやらせるとか、何か使命を与えてやらせるようにしますと、自分の仕事として喜んでやるようになります。そして仕事をしてきたら褒めてやる。つまり、相手を活力に充ちた一個の生命として見て、その生命がある使命感や責任感を持ったならば、方向づけられてちゃんと働くものだ、という事実を認識することです。…
これらの、体を使って現実にあたり仕事をすることは、直接感覚とか、現実感覚を呼びおこすためのよい機会です。理屈でなく、自分の体でする経験は、知らず知らずのうちに内部に蓄積され、次第に自分というものの自覚につながってくるのです。女の子にも結婚の前に、ある程度責任をもった仕事の経験をさせてほしいと思います。現実を直接経験する機会を持たせてもらいたいのです。世の中の現実から学ぶことをしないと、とかく抽象的な、観念的な態度になってしまい、その人の人生が不安定で実り少ないことになると思うのです。」(近藤章久『感じる力を育てる』柏樹社より)
「相手を活力に充ちた一個の生命として見て、その生命がある使命感や責任感を持ったならば、方向づけられてちゃんと働くものだ、という事実を認識すること」は、子どもの健やかな成長にとって必要なだけでなく、親の子育ての姿勢を育むためにも必要なことだと思います。
また、「世の中の現実から学ぶことをしないと、とかく抽象的な、観念的な態度になってしまい、」それがその後の神経症の温床になってしまいます。
「体を使って現実にあたり仕事をすることは、直接感覚とか、現実感覚を呼びおこすためのよい機会です。理屈でなく、自分の体でする経験は、知らず知らずのうちに内部に蓄積され、次第に自分というものの自覚につながってくるのです」
もう観念はいい、理屈もいい、外に出よ、体を動かせ、人と接しよう、直接体験を積み重ねて行こう、それが人間の成長にとって必要不可欠であることをくれぐれも肝に銘じておきたいと思います。