本当のことがわかるには相応の時間がかかるものです。

例えば、ある人に
「あなたのお母さんはどんな人でしたか?」
と尋ねると、しばしば
「いやぁ、特に。平凡な主婦でしたよ。」
などという答えが返って来る。
しかし、それをそのまま鵜呑みにするわけにはいかない。

何度か面談を重ねるうちに、母親からは、あんなひどいことを言われた、こんなひどいことをされた、という話が出て来る。
それは当初、意識的に隠していた場合もあれば、
本人としては、隠している気はさらさらないが、無意識に隠している場合もある。特に母親に対する怒りや攻撃性が抑圧されている場合には、出て来るのに時間がかかる。

じゃあ、それで一件落着かというと、そうもいかない。
いろいろ話を伺っていくうちに、思い出すのもおぞましい、さらなる深い闇が明らかになってくる場合がある。
また、気づいていなかった母親からの意外な愛情に気づく場合もある。

母子関係についてだけを挙げても、こんなふうに話が二転三転することも珍しくはない。
昔から「薄皮を剥がすように」と言う表現があるが、セラピストとクライアントの共同作業によって、何枚も何枚も薄皮も厚皮も剥がれて行ってようやく、本当のこと=真実が明らかになってくるのである。
そのことは、対人援助職の人はよくわきまえておいた方がいいと思う。

そしてその前提として、クライアント-セラピスト間の信頼関係が必要となることは言うまでもない。
信頼がなければ、本当のことは話さない。
これもまた親子関係に傷がある人ほど、基本的な他者への信頼感が育っていないため、信頼関係ができるでに時間がかかるし、
セラピストの側も、できれば、クライアントの存在に対して畏敬の念を持って接し続けていただきたいと思う。

信頼関係というのもまた、クライアントとセラピストの共同作業によって初めて構築されるものなのである。

 

 

お問合せはこちら

八雲総合研究所(東京都世田谷区)は
医療・福祉系国家資格者と一般市民を対象とした人間的成長のための精神療法の専門機関です。