2022(令和3)年、大阪で「北新地ビル放火殺人事件」が起こった。
北新地のビル内の精神科/心療内科のクリニックにおいて、通院患者がガソリンを撒いて放火し、放火犯を含む、通院患者、院長、スタッフ26名が亡くなった事件である。
この事件は、さまざまな方面に波紋を広げたが、その中のひとつとして、いわゆる「応召義務」の見直しがある。
「応召(応招)義務」とは、医師法に定められたもので、「診療に従事する医師は、診断治療の求めがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」としている。
この条文自体は至極もっともなものであるが、その反面、「断れない」ことによって、特に医療界において悪意のカスタマーハラスメントを蔓延(はびこ)らせて来た一面がある。
即ち、「応召義務」があるために、社会通念上許されない暴言、脅迫、過度な要求などを繰り返す人物も診断・治療しなければならなかった(早い話が医師の側に「断る」選択肢がなかった)のである。
それがこの事件によって、この事件前に出されていた「応招義務をはじめとした診察治療の求めに対する適切な対応のあり方等について」(医政発1225第4号令和元年12月25日厚生労働省医政局長)が見直され、その中の「診療の基礎となる信頼関係が喪失している場合には、新たな診療を行わないこつまり、とが正当化される」ことが改めて確認されたのである。
先の事件においても、事態がこじれる前に、診断・治療を断る選択肢があったかもしれないということになる。
…とここまで書いて来たが、今日のテーマは医師の「応召義務」ではない(さらに知見を深めたい方は各自研究されたし)。
そうではなくて、むしろ医師以外の対人援助職において、法的な「応召義務」がそもそもないにもかかわらず、実際の現場において、社会通念上許されない暴言、脅迫、過度な要求などに晒(さら)されて、いわゆるカスタマーハラスメントに耐えておられる場合があるのではないかと危惧したのである。
一方的なサンドバック状態に耐えていませんか?
過剰に責任を取り過ぎてはいませんか?
信頼関係はできていますか?
もちろん「気に入らない」患者、利用者、クライアントをどんどん斬っていい、降りていい、逃げていい、と言っているわけではありません。
その苦労が我々を人間として職業人として育ててくれる面があるのも事実です。
問題はあくまで「社会通念上許されない範囲」となった場合です。
当たり前の人間としてダメなものはダメです。
ならぬものはならぬものです。
私としては、もっと気軽に弁護士やカスタマーハラスメント相談窓口を利用された方がいいし、普段からその分野に関する研修もどんどんやった方がいいと思っています。
そしてその上で、出逢うべき患者、利用者、クライアントと出逢い、するべき苦労はしながら、あなたが果たすべきミッションを果たして行きましょう、ということです。
そこにあなたが今回の人生で真になすべきことがあります。