ジェームズ・ディーンを扱った作品を観た。

観ているうちに段々気が重くなって来た。
どう観ても、今まで何人も出逢って来た、境界性パーソナリティ障害(BPD:borderline personality disorder)の青年なのである。

現実の彼は、いろいろなトラブルを起こしながら、『エデンの東』『理由なき反抗』(なんという良い題名だろう)そして『ジャイアンツ』の三作を作り、24歳で亡くなった。
スピード超過の交通事故であった。

9歳のときに母親と死に別れると、父親に捨てられ、自分か誰かわからず、演劇にすがった。
自分がなくても、台本があれば生きて行ける。そして、うまくやれば評価された。
BPDの演劇好きはよく知られるところだ。
しかし、演じても演じてもそれは自分ではない。
そして自分が拡散したまま、さして死ぬつもりでもないのに、はかなく死んで行く。
どうせやっぱり生きていてもしょうがない自分の実現の匂いがする。

条件付きで愛された我々は、生きて行くためにとりすがる仮面を容易に手に入れることができた。
しかし、何をしても愛されなかった彼は、安定した仮面すらも手に入れられなかった。
それでも、持って行き場のない寂しさと怒りだけは渦巻いている。
それで安定した人間関係が築けるわけがなかった。

それにしても、精神医学の専門家でもないのに、見事にディーンを演じている俳優には驚いた。
いや、精神医学の専門家でないからできたのかもしれない。
下手な専門家たちよりも、小説家、脚本家、俳優たちの方が、遥かに人間の真実をとらえていることは多い。

そして、その不安定極まりないBPDの彼ら彼女らが(折角そこまで苦しんだのだから、多数派の人たちが腰を落ち着けている「仮幻の自己」ではなく)「真の自己」に着地するためには…。

そのテーマは、彼の作品を涙ながらに観る若者たちが多かったということからして、彼だけのテーマではない、自分を生きることの本質を含んでいると私は思っている。

 

 

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