テレビをつけたら、懐かしい時代劇の再放送をやっていた。
萬屋錦之介主演の『破れ奉行』である。
皆さんはご覧になったことがあるだろうか。
萬屋錦之介扮する深川奉行が、法の目をかいくぐって悪事を重ねる時の権力者や悪党どもを将軍拝領の刀で叩っ斬って成敗するという痛快娯楽時代劇である。
最後に、萬屋錦之介が
「やかましゃい!この野郎!」
と叫んで刀を抜き、斬りまくるところが最高の見せ場である。
十代の頃、双子の弟と私の間でこの「破れ奉行ごっこ」が流行り、一方が悪人役、他方が萬屋錦之介役となり、最初は悪人役が散々に萬屋錦之介をいたぶり回した挙句、最後に堪忍袋の緒が切れた萬屋錦之介が「やかましゃい!この野郎!」と叫んで、悪人役を斬りまくるというのがお定まりの展開であった。
この溜めて溜めて溜めて最後にドカーンとキレるというのは、実は幼少期からの私のパターンであり、周囲からもよく指摘されていた。
しかし、今にして思えば、それは私の持って生まれた気質ではなく、あの松田家の支配的雰囲気の中での鬱屈した思いが溜まりに溜まって爆発するという形を取って表われていたのである。
よって、『破れ奉行』のストーリー展開に、当時の私がはまるのも当然であった。
近藤先生のお蔭で、今は本音をむやみに溜め込むこともなく、自分の思いをいつでも表出できるようになったため、溜めて溜めて溜めて最後にドカーンというパターンはなくなったが、久しぶりに『破れ奉行』を見て、実に懐かしく感じたのである。
ちなみに、放送途中からこの名セリフ「やかましゃい!この野郎!」が、何故か「てめぇら、斬る!」に変えられてガッカリしたのを覚えている。
やっぱり「やかましゃい!この野郎!」でないと雰囲気が出ない。
また、今回調べていて発見したのは、この『破れ奉行』の第1話などの脚本を書いたのが池田一朗という脚本家であり、それはなんと、あの『吉原御免状』を書いた小説家・隆慶一郎その人であった。
私が気に入るはずである。
ご関心のある方は是非一度ご覧あれ。
但し、「やかましゃい!この野郎!」パターンで。