唯一の親友に教えられて、日本の小説を次々と読んだ時期があった。
彼は古典から現代のものまで読み尽くしている上に、その審美眼には敬服するものがあったため、非常に豊かな時間を持つことができた。
それが最近、若い方から日本の小説を読んでみたいが、どんなものを読めばいいか、との質問があり、久しぶりに振り返ってみることになった。

しかし、今どきの人にとって日本文学はかなり縁遠いものになっていると思われる。
その人も今までほとんど読んだことがないと言われる。
となると、どんなに良い作品をお勧めしても、活字に慣れてない人にとって読みにくい作品であれば、折角の関心を挫(くじ)いてしまうことになる。

よって、いろいろ思案した結果、私が日本最高峰と思う作家の一人、川端康成を紹介することとした。
世間的にもノーベル文学賞受賞者なので、名前だけは知られているだろう。
内容についての要らぬ解説は、初見で読む人の体験を邪魔してしまうので、それは省略し、ただひとつだけ、可能ならば、下記の順番で読んでほしい、と注文をつけた。

(1)まず最初に、『伊豆の踊子』と『雪国』。

(2)次に、『片腕』と『眠れる美女』。

(3)最後に、『山の音』。

予想通り、そんなに何冊も読むんですかぁ!?という反応であったが、川端の文章はまさに美しい日本語の代表であり(最近の芥川賞作家でも川端で文章を学んだという話は何度も聞いた)、折角チャレンジするのならば是非、とお勧めした。

拙欄をお読みの方々の中にも関心のある方がいらっしゃるかもしれないと思い、ここにご紹介する次第である。
もし(1)(2)(3)を読み終わった方があったら、面談のときにまたお話しましょう。
その読書体験はあなたの何かを刺激すると思いますよ。

 

 

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