うつ病になりやすい病前性格についてはいろいろ言われて来たが、わかりやすい言葉で、主なものを挙げると、
(1)「~でなければならない」「~であるべきだ」という考え方にとらわれやすい
(2)他者の評価が気にかかる(いわゆる他者評価の奴隷)
の2点でないかと思う。

それらのために、自分のキャパ(capacity=容量)を超えて、「~でなければならない」「~であるべきだ」で頑張り過ぎたり、他者評価が気になってやり過ぎたりすることで、いつの間にかエネルギーを使い果たし、うつ病のスイッチが入ってしまうのである。

この二つの病前性格のうち、
(1)については、生来の発達特性(特に自閉スペクトラム(AS:autism spectrum)あるいは自閉スペクトラム症(ASD:AS disorder))が主の場合と、生育史の影響による後天的な神経的特性が主の場合があり(両方の場合もある)、
(2)については、概ね生育史の影響による後天的な神経症的特性である(生まれつき他者評価を気にする子どもはいない)。
(A)生来の発達特性については、まず自分で自分の特性をよく知った上で、先天的な発達特性は変えられないので、その特性との付き合い方、そして、その特性を持った上での他人や社会との付き合い方を学んで行く必要がある。
(B)それに対し、生育史の影響による後天的な神経症的特性については、まず自分で自分の特性をよく見つめた上で、その由来を知り、後天的な神経症的特性は変えられるので、現実生活の中で果敢に行動変容に挑んで行く必要がある。

しかし、いずれにしても、専門の精神科医や臨床心理士などの力を借りて取り組んで行っても、今の生き方が身につくまでには年季が入っているため、変えて行くにはそれ相応の時間がかかる。
そのため、その本格的な成果が表れるまでの“つなぎ”として、自分の今の「エネルギー残量」を感じ取れるようになることを私はお勧めしている。
上記(1)(2)のせいで、自分の今の「エネルギー残量」を無視してやり過ぎた結果、エネルギーが底を突いて、うつ病を発症しているのだから、まず自分の今の「エネルギー残量」を感じ取れるようになれば、「おっと危ない! ここでやめとかなくちゃ。」と踏みとどまることができるようになるのである。
ますはとにかく「今の自分の『エネルギー残量』はどれくらいかな。少なくなってないかな。」と立ち止まる練習を繰り返し、習慣化して行くこと。
経験上、それでも最初はぶっちぎって疲弊してしまう失敗をやらかす方も少なくないが、それも想定内。
体験を繰り返せば、人によって早い遅いの差はあるが、感度は上がっていく。
そうやって、自分の今の「エネルギー残量」を感じ取れるようになれば、少なくとも“大崩れ”はなくなって来る。
そしてその間に、上記(A)(B)に本格的に取り組むのである。
あくまでこっちが本命であり、ここと勝負しない限り根本的な解決はない。

これもまたひとつの臨床的経験智。
ご参考になれば幸いである。

 

 

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