ある人が訪問看護ステーションを立ち上げた。
開業当初は利用者が少なく、かなり遠方の人でも、この人は援助対象としてちょっと違うなと思う人でも、折角開業した会社を潰すわけにはいかないので、何でも引き受けた。
後に利用者が増えて来ると、当初無理をして引き受けた利用者が重荷になって来たが、今さら断ることもできなかった。

ある人が訪問看護ステーションを立ち上げた。
地域の病院で10年近く働き、地域の活動も関係諸機関と連携してやって来たので、開業してすぐに利用者がいっぱいになった。
以後も、会社から近い地域で密度の高い支援をすることができた。

だから、開業にはしっかりとした準備が要ると申し上げたいところであるが、かく言う私が開業したときも(近藤先生逝去後に動き出したこともあって)クライアントはとっても少なかった。
治療のための精神療法の依頼や、「情けなさの自覚」も「成長への意欲」もない面談の申し込みはあったが、あくまで開業当初の「対象」にこだわり、すべてお断りした。
最初はヒマでしょうがなかったし、収入面でも苦労したが、今になってみると、そこで踏ん張って来て本当に良かったと思う。
毎朝、面談の予約表を見て、ああ、今日はこの人がいらっしゃるのか、この人と面談するのか、と思うとき、一人残らず、楽しみなのである。
楽しみと言っても、面白おかしい楽しさではなく、大いに苦労する場合も多々あるが、やっぱり「情けなさの自覚」と「成長への意欲」を持っている方々との面談はやりがいがあるのである。
つくづく「対象」にこだわってやって来て本当に良かったと思う。

だからね、いろいろと苦しくても、ブレちゃいけないときがあるのです。
今、迷っている方にこそ、こう申し上げたい。
苦しくとも守ったからこそ得られるものと、
苦しくて変えてしまったからこそ失うものがあると。

 

 

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