推し活をしている人が、甲斐あって推しが公演する劇場の1列目の席が取れた。
一番近くで推しが見られると大変に喜んだが、実際に公演が始まり、憧れの推しと目が合った瞬間、思わず目を逸らしてしまった。
「バカ、バカ、あたし、何やってんだ! 誰か私を殴って下さい!」
それも経験値。
数カ月後、運良くまた1列目の席が取れたとき、今度は開演前から何度も気合いを入れて
「絶対に目を逸らさないで見返すんだ!」
と自分に言い聞かせる。
そして本番。
なんとまた推しと目が合った。
気合いを入れて拳を握り締め、推しの目を見返したが、なんと推しがウィンクして来た。
忽ち撃沈して固まった。
「あぁ〜、なんで何の反応もできなかったのか! こっちからもウィンクし返すことができたら!」
悔しくて眠れない夜が続く。
そしてまた数カ月後、運良くまたまた1列目の席が当たった。
今度こそウィンクし返してやる。
何度もリハーサルを行い、気合い十分で“そのとき”を迎えた。
そして目が合った瞬間、待ちに待った推しからのウィンクが来た!
全エネルギーを使ってウィンクし返す。
一瞬推しも驚いた顔をしたが、すぐに笑顔。
やったぁ! 遂にミッション・コンプリーテッドだっ!
…と思ったら、推し仲間の子は、推しからのウィンクに対して、なんと投げキッス!で返していたことを知る。
う~ん、そっかぁ~、そのまま返せばおわりというわけじゃあないのね。
もっと自由に、もっとクリエイティブにやりとりを楽しまなきゃ。
そのようにして推し活は推し活で、自分を解放する道に通じるのでありました。