城山三郎の『そうか、もう君はいないのか』を読んだ。
『落日燃ゆ』『男子の本懐』などの経済小説で知られる城山氏が、長年連れ添った愛妻を亡くした後に書かれたエッセイである。
普段こういったジャンルの本を読むことはないのだが、ふと見かけて衝動買いしてしまった。
読んでみて個人的に思うのは、読者を選ぶ作品ではないかということである。
結婚して三十年(できれば四十年)以上共に暮らし、妻に助けられて来たという自覚のある男性が読むと、非常に情緒的に刺さる作品であると思う。
女性や若い人が読んでも感じるところはあると思うが、老年期に至った男のロマンチシズムという読者側の要素がないと、膨らみに欠けるかもしれない。
そう。
年輩の男性がこの表題を見たときから、その内容は走り始めているのである。
そんな本もあるのだな。
たまには“エモい”作品を読むのもいいかもしれない。