診断基準を満たさないものの自閉スペクトラム(AS:Autism Spectrum)や注意欠如・多動症(AD/HD:Attention-deficiet Hyperactivity Disorder)の“傾向”を持つ方は、思いの外、多くいらっしゃる。

ある男性は、小さい頃から、忘れたり抜けたりしがちで、その場の空気や相手の気持ちがうまく読めないために、怒られ、注意されることが多く、悔しい思いを重ねて来た。
結婚し、子どもができてからも、
忘れたり抜けたりしがちで、その場の空気や相手の気持ちがうまく読めないために、さまざまなことで妻からも怒られて来た。
特に彼の妻は、神経症的に几帳面で気を遣い過ぎる方であったために、細かいことまで注意・叱責される日々が続いた。

その妻が、ある日、珍しく大きなミスをした。
そういう性格の人なので、自分でもガッカリしてうなだれていたが、それを見た夫は、ここぞとばかりに、日頃の恨みを晴らそうと、そのミスについてしつこく責めた。

だからあなたは嫌われる。

この夫が愚かなのは明らかである。
(そしてそれは発達障害の名誉にかけて、発達障害特性によるものではなく、人格によるものである)その態度によって、彼の妻は、今度夫がミスしたときには今まで以上に徹底的に責めてやろうと心に誓い、
本気で、この人と一緒にいて意味があるのだろうか、と考えるようになった。

「己(おのれ)の欲せざる所は人に施すこと勿(なか)れ」(『論語』)
という通り、自分がされてイヤなことは相手にはしない。
妻がミスしたときこそ、優しく接してあげることができれば、夫婦仲は大きく変わったかもしれない。

別の男性もまた、同様の特性を持ち、周囲から怒られ、注意されることが多く、悔しい思いを重ねて来た。
しかし、彼の場合は、鉄の意志と鬼の努力でガリ勉し、医学部に入って、医者になった。
それでもまだ忘れたり抜けたりしがちで、その場の空気や相手の気持ちがうまく読めないために、医局の中では先輩医師から注意・叱責されることが多かった。
そして彼はクリニック開業の道を選んだ。

自分が院長になってしまえば、誰かに責められることがない(少なくとも大幅に減る)。
その思い通り、彼は雇用した看護師や医療事務などの職員の上に“君臨”し、今までの憂さを晴らすかのように、実にエラソーな院長になってしまったのである。

だからあなたは嫌われる。

この男性が愚かなのは明らかである。
(そしてそれは発達障害の名誉にかけて、発達障害特性によるものではなく、人格によるものである)
自分のミスは棚に上げたそのエラソーな態度によって、退職者は後を絶たず、慢性的に人手不足・求人しっ放しの状態に悩むことになった。

のび太がジャイアンになってどうするんだよ。
自分の特性を認めて謙虚になり、職員に助けてもらいながら、患者さんのために誠実に働く院長になりましょうよ。

結局、起こる問題の本質はいつも、特性によるのではなく、人格によるのである。
特性は変えられないが、人格は変えられる=人間として成長できることを忘れてはならない。

 

 

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