日本の厚生労働省が採用している診断基準と言えば、WHO の作成した ICD(International Statistical Classifiction of Diseases and Related Health Problem)(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)である。
現在、『ICD-10』(第10版(Tenth Revision)という意味)が使われているが、往時、その精神科領域の日本語版作成を私の出身大学が担当し、研修医だった私もその翻訳に参画したのを覚えている。
そう思うと、随分古い話になる。

WHO では既に第11版の『ICD-11』が刊行されているが、その日本語版がなかなか出版されず、そのブランクを埋めるかのように作成・翻訳・出版されているのが、アメリカ精神医学会が作成した DSM(Diagnostic and Stastistical Manual of Mental Disorders)(精神疾患の分類と診断の手引)、現在は『DSM-5-TR 』(第5版の改訂版(Fifth Edition Text Revision)という意味)の日本語版が出版である。

それで仕方なく、『DSM-5-TR』を拾い読みしていたが、余りにも『ICD-11』日本語版の出版が遅いので、この機会に『DSM-5-TR』を通読してみることにした。
そもそもが Desk Reference とあるように、小さな冊子なので、毎日、数項目ずつ読み進めても、そのうち読了できる
『ICD-11』日本語版も出版されれば、きっと同じやり方で通読するだろう。

ICD も DSM も、精神科医による診断一致率を高めるため、例えば、「最近6カ月以内に、以下の10項目の症状のうち、7つ以上が認められれば、〇〇症と診断してよい」というような「操作的診断基準」の立場を取っているので、表面的と言えば表面的、奥行きがないと言えばない、のだけれど、それでも「へぇ、今はそう考えるんだぁ。」と勉強になる場面がいくつもあった。
純粋に精神科医としての知識獲得には役立ったと思う。

しかし、私は精神科医よりも精神療法家になりたいし、精神療法家よりも人間的にさらにさらに成長したい。
そして、クライアント/患者さんがどのような精神疾患の診断基準を満たそうとも、人間対人間という根本的スタンスは(考えて、気をつけて、そうするのではなく)自然にそう感じていられる人間でいたいと思う。
 

 

お問合せはこちら

八雲総合研究所(東京都世田谷区)は
医療・福祉系国家資格者と一般市民を対象とした人間的成長のための精神療法の専門機関です。