自分が「社長」だから、社員が頭を下げていることを知らずに、みんな自分に頭を下げているものと思っていた。
退職後、誰も相手にしてくれなくなった。

自分が「教授」だから、教室員が頭を下げていることを知らずに、みんな自分に謝を下げているものと思っていた。
退官後、誰も相手にしてくれなくなった。

自分が「校長」だから、生徒や教師が頭を下げていることを知らずに、みんな自分に頭を下げているものと思っていた。
退職後、誰も相手にしてくれなくなった。

利害関係の絡む「肩書き」によってじゃなくてさ、たとえ無位無官であっても、「裸の自分」で他者からの信頼と尊敬を得られないようじゃあ、まだまだ人間としてニセモノだったということだ。

昔、外来に受診した男性で、変わったおじさんがいた。
やたらめったら女性に手を出すので、妻から「あんた一遍診てもらいないさい。」と言われて来たのだという(たまにこんな変わった理由で受診して来る方がいる)。
結局、病的なところはなく、ただの好色かつ本当に女性を愛するということを知らないおじさんだったのであるが、一点だけ見どころがあった。
彼が女性をナンパするとき、自分が三つの会社の社長であることも、フェラーリに乗っていることも、金満家であることも隠して、一人の男としての魅力だけで勝負するのだという。
「裸の自分」で勝負していることだけは私も褒めた。
そして妻を含めて、本当に女性を愛するということの本質について説諭し、1回だけで通院は終了とした

社長/教授/校長の中にも、その「裸の自分」に対する信頼と尊敬を得て、退職後/退官後も、元部下/元教え子たちに慕われている人たちも(少ないけど)いるのである。

どうせなら、そっちを目指したいよね。
だから、人間としてホンモノを目指す人は、「裸の自分」を磨いて行くしかないのである。

 

 

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