このままAIが進化して行けば、人間の仕事が次々とAIに奪われてしまうのではないか、と危惧されている。
そんな中で、幸いにもカウンセリングやサイコセラピーの分野は、AIがどんなに進化しても、人間でないとできない分野、と言われて来た。
しかし、現状を見ると、そうでもない動きがある。
AIにメンタルな相談をし始めている人たちが、思いの外、多いのだ。
もちろん最初から“眉唾物”として、遊び感覚で利用している人たちもいるが、中にはかなり本気で相談している人たちもいて、臨床の現場では、「AIに相談したら、こうでした!」と患者さんに言われて苦笑せざるを得ない精神科医や臨床心理士が増えていることも事実である。
そんな話をあれやこれや聞いていると、AIに簡単に相談し、影響を受ける人たちに、ある程度、共通の傾向があることが見えて来た。
詳しく言うと専門的に過ぎるので、ここで深入りはしないが、ひとつだけ言えるのは、AIに簡単に相談し、影響を受ける人たちは、またその影響もすぐに消えやすい、ということだ。
だから、そんなに心配は要らないのかもしれない。
それにAIの言うことを信じようと信じまいと、結局、利用した人の“自己責任”という大原則は変わらない。
ちなみに、私は「AIによる相談」を「博識のど素人のおじさん/おばさんによる相談」とみなしている。
猛烈にいろんなことを知っていたりするが、申し訳ないけれど、やはり“ど素人”なのだ。
そうは言いながらも、知識と技術でカウンセリングやサイコセラピーをやっている人たちは、ちょっと心配をした方が良いかもしれない。
ある程度、“パターン”の対応や考え方、使われがちな“決めゼリフ”などは、AIに簡単に持って行かれてしまうだろう。
相手の表に表れている言動。
相手が意識的/無意識的に隠している本音。
そして、本人も全く気づいていない本音の本音=生命(いのち)の声。
それを観抜かなければ、本当のカウンセリングやサイコセラピーを行うことはできない。
そしてそれは、AIと鈍感な人間には不可能なことであった。
それ故、ホンモノのカウンセリングやサイコセラピーを目指すならば、やはり、AIには無理な、“感じる力”を磨くしかないのである。