私が学生への教育を重視しているのは、まだ現場の変な先輩たちに汚染されないうちに、大切なことを伝えられるからである。
話してみて感じるのは、何よりもその吸収の素直さである。
従って、現場に出る前に、いくらかでも本質的なメッセージを伝えておけば、たとえ逆風渦巻く現場に出たとしても、なんとか自分を保って、成長して行けるかもしれない。

それに比し、既に現場に出ている人たちは、そこで生き残るために、そもそもの問題に加え、一層ややこしいことになってしまっている場合が多い。
それでも私が希望を捨てていないのは、酷い環境にいながらも、自分の真っ当な感覚を死守し、患者さん・利用者さんのために、懸命になって戦っている人たちがいるからである。
こういう人たちは、残念ながら、いつも少数派ではあるが、いてくれるから、現場が支えられているのだと思っている。

これらのことから、私は、
対人援助分野の学生の教育
および
現場で「情けなさの自覚」と「成長への意欲」を持って働いている対人援助職者たちの応援
に特に力を入れているのである。
まだ若い学生に最初から「情けなさの自覚」と「成長への意欲」を求めるのは酷というもので、その代わりに、彼ら彼女らの素直さに懸けている)

まだまだ気になることは、あれもこれも数え切れないくらいあるが、私の身ひとつ、そして1日24時間、1年365日を考えると、そうとっちらかってはいられない。

若い頃は、義理や義務、時に情や欲も絡んで、やることが、文字通り、とっちらかっていたように思う。
年を重ねるということは、やるべきことがわかりやすくなってくるということでもあるのだな、ということをしみじみと実感している。

 

 

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