ある若手の精神科医が外来で受け持ち患者さんの診察をしていた。
診察後、隣の診察室にいたベテラン先輩医師が、若手の精神科医に声をかけて来た。
二人のやりとりが隣の診察室に聞こえていたのであろう。
性格優しめの若手医師に対して、アク強めの先輩医師はこう言った。
「正しいことでも、押し気味に言わないと、相手に伝わらないぞ。」

後輩にアドバイスしようと思った善意は多としたいが、内容に問題がないわけではない。
即ち、これでは、「押し気味に言えば、多少間違っていても、相手に伝わる」というニュアンスになりかねず、“ハッタリの勧め”になってしまうではないか。
いかにもその先輩医師自身がそういうタイプであった。

そうではなくて、いかに性格優しめであったとしても、その発言に“勁さ”や“押し”がないのは、実は、自分の考えに“確信”がなかったのである。
“確信”がないと、声も小さくなるし、押しも弱くなる。
従って、若手医師が学ぶべきことは、まず自分自身の人間観、治療観、人生観、世界観をしっかりと(腹の底からそう思えるように)持つことなのだ。
そうなれば、自ずからその発言は、力のあるものになって来る。
そして当然、相手にも伝わりやすい。

だから、私ならば若手医師にこう言うだろう。

「まず自分の軸を持とう。」

そしてそのためには、自らの内省と人間的成長が必要なのである。

ハッタリ屋になるなよ。

 

 

お問合せはこちら

八雲総合研究所(東京都世田谷区)は
医療・福祉系国家資格者と一般市民を対象とした人間的成長のための精神療法の専門機関です。