基本的に、前情報は鵜呑みにしない。
ひとつの情報として参考にさせていただいている。

児童専門外来をやっていたとき、その子どものお母さんについての情報が入る。
「難しいお母さんですよ。」と。
しかし、実際にお逢いしてみると、哀しみと孤立と疲れの中で一所懸命に生きて来たお母さんに出逢うことがある。
「どこが難しいんだよ。」
確かに、実際に難しいお母さんに出逢うこともある。
しかし、それは難しい精神科医や、難しい臨床心理士や、難しい看護師や、難しい精神保健福祉士や、難しい作業療法士と出逢う確率と余り変わらないと思う。

実際にお逢いしてみなければわからない。

精神科外来で紹介状(診療情報提供書)をいただくことがあった。
中にはなかなかの内容のものがある。
「会話が成立しない。」「一方的。」「わがまま。」「思い込みが激しい。」「頑な。」
たくさんの否定的ワードが並んでいる。
しかし、実際にお逢いしてみると、例えば、特性による生きづらさの中で拙くも一所懸命に生きて来た青年に出逢うことがある。
「どこが難しいんだよ。」
フツーに話を聴いただけで、
「初めて話を聴いてもらえた。」
と泣き出してしまった。
確かに、実際に難しい当事者に出逢うこともある。
しかし、それはやっぱり難しい精神科医や、難しい臨床心理士や、難しい看護師や、難しい精神保健福祉士や、難しい作業療法士と出逢う確率と余り変わらないと思う。

実際にお逢いしてみなければわからない。

勿論、非常に参考になり、有り難い前情報に助けられることもある。
しかし最終的には、自分の眼で耳の五感で、さらには六感で、感じてみなければわからない。
それがもし私からの前情報だったとしても、どうぞそうして下さいな

 

 

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