精神医学的エビデンスは見たことがないが(もしあったら教えてほしい)、
昔から関係者の間では、春~新緑の季節=「木の芽どき」は精神的に調子を崩す人が多い、と言われて来た。

そこでいう不調の中味は、その人が元々抱えていた精神的問題が先鋭化するということであり、必ずしも新しい問題が出て来るということではない。
例えば、うつ病や統合失調症で闘病中の人ならば、その時期に病状が再燃しやすかったり、神経症の人では、いつも以上に、その人に生育史上付いたテーマ(例えば、他者評価が気になったり、ねばならない・べきだ)などにとらわれたりする。
まさに持っていたものが芽を吹くのである。

ちなみに「木の芽どき」というとき、それは新年度やゴールデンウィークといった社会的要因によるものではなく、季節の変わり目といったむしろ気象的な要因によるもの、というニュアンスがある。
人間もまた気象の中で生きている存在なのである。

そうなると、ここでもまた、「で、どーする」という問題が出て来る。
気象は変えられない以上、こちらで調節するしかない。

ひとつは、ただでさえ不調に陥りやすいこの時期は、無理をせず、よく休み、よく寝て、ストレスは可能な限り少なくし、エネルギーもできるだけ温存する策に出た方がいいということだ。
治療中の方は、早め早めの薬物調整が有効な場合もある。

そしてもうひとつ、神経症的テーマについては、逆にその問題と向き合うチャンスにできるかもしれない。
即ち、「ああ、まだこんなことが気になるんだ。」「この問題が未解決で残っていたんだ。」と気づき、木の芽どきになっても、そういう神経症的テーマに翻弄されなくなるような境地を目指したい。
そしてもし神経症的テーマと向き合うのがしんどければ、呼吸や祈りを深める機会にできるかもしれない。
自力でダメなときこそ、他力におまかせすることを体験する好機になるのである。

 

 

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