社交不安症(社会恐怖)というこころの病気がある。
古くは対人恐怖とも言った。
その症状をざっくりと申し上げると、注目を浴びるような社交場面にいると、自分が変に思われるんじゃないか、ダメだと思われるんしゃないか、ということが気にかかり、不安でいっぱいになってしまうのである。
これもまた、ある意味、自分が他者からどう思われるかということ=他者評価にとらわれているのであるが、決して高い評価がほしいわけではなく、低い評価だけは喰らいたくないのである。
厳密に診断基準を満たさなくても、こういう傾向を持っている人は、かなり多いのではなかろうか。

そのように、自分がどう見られるか、自分がどう思われるか、自分がどう評価されるか、そういう思いにとらわれているとき、意識は常に“自分”に向いている。
その典型的場面を挙げるならば、人前で発言するとき、発表するとき、プレゼンするときなどに、動悸がしたり、冷や汗が流れたり、声や体が震えて来るのである。

そこで今回は、ちょっとその“向き”を変えてみることをお勧めしたい。
“自分が”“自分が”ではなく、何のため、誰のための発言か、発表か、プレゼンかという、そもそもの原点に立ち戻り、
相手にとって、聴衆にとって、伝えたい内容が、役立つ内容が、少しでもわかりやすく、的確に、伝われば良いな、というスタンスで取り組んでみるのである。
即ち、“自分向き”から“相手向き”“目的向き”に姿勢を変えてみるのだ。
そして、
そうやってやってみると、大切な相手に伝えたいことがちゃんと伝わりさえすれば、自分個人の評価なんかどうでも良い、という気持ちにさえなってくる場合もある。
少なくとも、あれほど支配されていた不安がなくなっている、あるいは、格段に減っていることに気がつくだろう。

現実社会には、試す場面はいろいろある。
そのスピーチは、誰のため、何のため。
その講演は、誰のため、何のため。
その学会発表は、誰のため、何のため。

自分が否定的評価を喰らわないためではなく、本来の、誰のため、何のため、に立ち戻って、チャレンジを。
今、ちょっとやってみようかと思ったあなたの中には、少なくとも、今までのあなたを超えて、あなたを成長させようとする力が動き始めているのですよ。

 

 

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