文明の進歩はそのまま、思い通りにならなかったことを思い通りにして来た歴史でもある。
医学の進歩により、治らなかった病気が治るようになったり、
交通機関の進歩により、飛行機や新幹線で遥かに早く移動できるようになったり、
家電の進歩により、冷蔵庫で食料を保存し、エアコンで暑さ・寒さをコントロールし、電子レンジであっという間に温めることができるようになったりなど、
挙げればキリがなく、我々が受けて来た恩恵は計り知れない。
例えば、私が尿路結石の疝痛発作に七転八倒するとき、これでもし鎮痛剤の坐薬がなかったらと思うとゾッとする。
また、小児がんで苦しむ子どもたちが、最新の治療で完治したなどという話を聞くと、本当に有り難いと思う。
研究者・開発者の方々には深く感謝したい。
先に、思い通りにならないことを抱えながら生きて行けるようになることが大人の成熟であると申し上げたが、それは、何でもかんでも思い通りにならないことはさっさと諦めて我慢しなさい、という意味ではない。
最初に申し上げた通り、思い通りにならなかったことを思い通りにして来たのが文明の進歩である。
その恩恵は享受して良いし、さらに、思い通りにならなかったことを思い通りにして行くという文明進化の未来は、きっと続くであろう。
ただし、それでも、である。
どんなに文明が進歩しても、やっぱり思い通りにならないことは、残念ながら、残る。
必ず残るんですよ。
だからこそ、思い通りにならないことを受け入れるという大人としての成熟は、永遠に求められるのだと思う。