私が定期的に受けている大腸内視鏡検査では、検査前に大腸内の便を除去してしまうために、検査前夜に下剤を飲み、検査当日に腸管洗浄剤を飲むという2段構えの前処置がある。
今回は、その検査前夜に服用する下剤の話であるが、精神科で私も処方し慣れた、アローゼン(センナ)やプルゼニド(センノシド)、ラキソベロン(ピコスルファート)などが使われることが多い(アローゼン、プルゼニド、ラキソベロンは商品名で()内は一般名である)。
もう何度も検査を受けている私は、
それまで、あるときはアローゼン顆粒(0.5g)2包を、またあるときはプルゼニド12mg錠 2錠を前夜に飲むように言われ、検査日を迎えていた。
これはいずれも成人が便秘のときに1回に服用する通常使用量である。
それで、今までの検査は、何の問題もなく、受けることができた。
それが、ある検査のとき、担当医師からラキソベロン内用液を出され、1本10mL全部を飲むように指示された。
えっ?
ラキソベロンも処方し慣れた薬であるが、成人の1回に服用する通常使用量は10~15滴である(これをコップの水の中に滴下して飲む)。15滴=1mLであるから、10mLはその10倍に当たるのだ。
それでも、“従順”な私は、まあ、その方が余計に出て良いか、くらいに思って、1本全部を服用し、地獄を見ることになる。
翌朝、腹痛によって目覚め、便が出るどころか、激痛は増すばかり。
既に尿路結石の疝痛発作を経験している私だが、その痛みはそれに勝るとも劣らない救急車級であった。
どれくらいのたうち回っただろうか、やがて鉄の意志と鬼の根性で痛みを乗り切った私であるが、もう2度とラキソベロン1本は飲まないと固く誓ったのであった。
医師の指示を鵜呑みにせず、自分の頭で考えること。
既にアローゼンやプルゼニドの通常使用量で検査が成功していたのだから、ラキソベロンも通常使用量にしておけば良かったのである。
(ちなみに、担当医師の名誉のために付け加えるならば、ラキソベロン1本服用の指示を出す医師は結構おり(中には某大学病院で2本!というのもあった)、現に服用してちゃんと検査を受けている人もいるので、これは個人差なのかもしれない。それにしても、私は私に合わせるべきであった)
その少し前、私の親友が、角膜移植手術を受けることになり、術前に球後麻酔として眼の周囲に局所麻酔注射を受けることになった。
申し遅れたが、彼には先端恐怖があった。
何でも先の尖ったものを見ると、自分の眼を突かれるんじゃないか、と思ってしまう恐怖である。
元々それがあるのに、実際に目の周囲に注射針を刺されるのである。
これほどの地獄があろうか。
しかし精神科医である彼は、術前に自分で高容量の抗不安薬を服用して行った。
そんなことは知らない眼科医は、術前投与として通常使用量の抗不安薬を出したが、彼はあっという間にフラフラになってしまった。
それを見た眼科医が「あ~ら。抗不安薬がよく効く方ですねぇ。」と。
よく効くはずである。既にしこたま飲んで来ているんだもの。
それで手術を乗り切った彼は流石であった。
私が従順に、自分で判断せず、担当医師が決めたラキソベロン1本を服用して地獄を見たのに対し、
親友は、自分で判断し、自分に必要な抗不安薬の量は自分で決めて服用して地獄を回避したのである。
やっぱり、ただ従順で良いのは子どもの頃までで、大人は自分の頭で考えて自分の責任で自分を守りましょうね。はい。