近所の居酒屋さんが明日で店を閉めるのだという。
コロナ禍も生き残って来た店であるのに非常に残念である。
年輩の大将一人とアルバイトの子二人くらいで切り盛りする小さなお店であるが、このお店の魚料理は抜群に美味しく、都心でもなかなか食べられないレベルの刺身、煮魚、焼魚が、徒歩圏内で気軽に食べられるというのは大変に有り難かった。
月曜定休の店であったが、月曜の夜に店の前を通ると、半開きのシャッターの奥の厨房に灯りがつき、大将が下ごしらえをしているのがわかる。
これじゃあ、休みがないでしょ、と思うのだが、果たして出て来た料理を見ると、いつもひと手間の仕事がしてあった。
また、料理が出るのが遅れると必ずお待たせして申し訳ないと言い、雨の日に伺うと、足元の悪い中ありがとうございます、と言う律儀な大将であった。
目立たない市井の中にも、良い仕事をする人はいるものである。
閉店の理由を訊くのも野暮なので、今夜はこの店ならではの肴を並べ、日本酒で最後の名残りを惜しんだ。
ああ、やっぱり美味い。
お勘定の後、わざわざ店の外まで見送ってくれ、
「コロナのときもお弁当を買いに来ていただいて。」
とこちらが忘れたことまで覚えている、やっぱり律儀な大将でした。

本当にごちそうさまでした。

 

魚難民としてしばらく流浪することになるだろうなぁ。

 

 

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