味方のいない家庭で育った子どもは、当然のことながら、全部を自分の小さな頭と心で考えて対処するしかなかった。
そうなると、元々が偏りのある家で育って来た上に、一人で考えて来たものだから、いろいろなことに間違い・勘違い・思い込みが入り込む。
そして、それは本人一人で気づけることではないし、そんなことについて深く話す相手もいないものだから、修正されないままに大人になることになる。
それじゃあ、社会生活で生きにくくなるに決まっているよね。

面談をしていると、よくそんな方にでくわす。
「おっと、そこは勘違いだね。実はこうなんだよ。」
「それが有効だったのはお母さんとお父さんに対してだけだね。健全な人間関係では…。」
「いやいや、あなたが本当に感じているのは…。」
時には、何重にも間違い・勘違い・思い込みが層をなして絡み合い、これはどこから手を付けたらいいのか、と途方に暮れそうになるときもあるが、信頼さえしてくれれば、それでも薄皮を剥がすように余計なものが取れて行き、その度に本人も生きることが楽になり、そして、どの方向を目指して生きて行けばいいかが見えて来て、安心を実感するようになる。
それが体験できれば、この道で間違いない、この世界で私も私を生きて行けるようになれるかもしれない、という希望が生まれる。
そしてその希望が、さらに次の一歩への原動力となる。

そういうことが起こるのは、決して私の“正解”にその人を導いているのではない。
その人の中にある“正解”にその人が導かれて行くのである。
導くのは“私”ではない。
私を通して働く力と、その人を通して働く力とが、導いてくれるのである。

 

 

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