あるミュージカルを観に行った。
それはそれで佳品であったが、その中の挿入曲の歌詞の出だしが心に刺さった。
「あなたがわらってくれるなら」
(検索すれば、いくつかの曲がヒットするが、今回のはオリジナルの創作曲だそうだ)
ミュージカルの本筋を離れて、今まで関わりのあった、辛い子ども時代を送って来た彼ら・彼女らの顔が次々と浮かび、胸が切なくなった。
例えば、ある子どもは、酒は飲むは、ギャンブルはするは、女遊びはするは、の父親が母親を殴る蹴るするのを見て育った。
嫉妬に狂い、生活に疲れ、暴力に打ちひしがれ、暗い部屋で泣いている母親の後姿を見て、「あなたがわらってくれるなら」何でもしようと思った。
そして、道化師になり、しっかり者になり、良い子にもなった。
しかし、わらってくれるどころか、母親の持って行き場のない怒りは、残酷にも、この子に向いた。
叩く、なじる、放置する…。
それでも、母親にわらってもらおうと頑張って頑張って頑張った。
ああ、この子が本当にほしかったものは何だったんだろうか。
わらってもらいたいのもあったけどさ、そこまでこの子が頑張った本当の理由は
「あなたが愛してくれるなら」
であった。
子どもは愛されなければならない、絶対に。