「これは私がホーナイから学んだことですけれど、「近藤、何時でも、とにかくチャンスがあったら “How do you feel right at this moment?”(今この瞬間に、あなたはどう感じますか?)と聞けと言われたのです。私はそれまで、“What do you think right at this moment?”(何を考えるか)とやっていたわけです。ホーナイがそう言った意味が、彼女の教えてくれたとおりに質問したとき、初めてわかりました。そのとき彼らの中には感情が非常に抑圧されていて、その正当な発揮をする場所を得ていない。むしろ理性が暴君になっていると痛感させられることが何度かありました。私の所へ来る人は、ニューヨークにいる頃はあまり経済的に恵まれぬ人は来なかったし、日本に帰って来てもあまり余裕のない人は来られないので、割合にインテリの方が多いのですが、インテリの特徴から、今言いましたような観念的な思考型が多いように思います。それだけにインテリの方にノイローゼが多いのでしょう。 」(近藤章久講演『文化と精神療法』より)
最近の精神療法事情からしても、アメリカ由来の認知行動療法や論理療法などにおいて、何が合理的(rational)で、何が非合理的(irrational)か、という考え方でセラピーを進めているところを見ますと、理性重視の傾向は現在もあるように思います。
しかし、我々人間にとって、感情の問題は非常に重要で、時に「理性に偽装した感情」が跳梁跋扈して悪さをしていることは、まわりを見れば、あるいは、ご自分のことを内省してみれば、容易にわかることでしょう。
まず掴むべきは、そして、表出すべきは、感情です。しかも本音の感情です。もっと言えば、本音の本音の感情です。
良いも悪いもない、感情は瞬時に起きていますから、今さらそれを抑圧したり、否定したりしてもしょうがないのです。
そうしてそれをちゃんと認めて初めて、次のより深い、より本質的なステップに進んで行けることになちます。
それは、「で、その感情がどこから来たのでしょうか?」「あなたの生育史上の何から来ているのでしょうか?」というステップです。
それが解決されて行けば自ずと、起きて来る感情が、抑圧ややりくりを使わなくても、変わって来る、場合によっては消えて行くことさえあります。
だからまず “How do you feel?” “How do I feel?”の把握が大切な一歩。
ちなみに、現在の日本では、たとえ生活保護を受けていても、必要を感じれば自費のカウンセリングを利用される時代になりました。
決して一部の富裕層のものではない、カウンセリングやサイコセラピーの重視は、とても良い傾向だと思っています。