以前開業していた八雲は、自由が丘が近かった。
自由が丘と言えば、スウィーツの街としても有名だが、占いのメッカとしても知られている。
街を歩けば、あちらこちらに「占いの館」があり、路上に机を出しただけの占い師も見かける。
特に寒い季節の夜の路上占いには、何とも言えない風情(ふぜい)がある。
以前は、いつか歌舞伎町あたりで路上占いをやってみたい、と思っていたが、
最近は、見た目もいい年にもなって来たし、占いの館でも路上占いでもいいので、土地勘のある自由が丘あたりでやるのが面白そうだと思っている。
しかし、肝心の占いができない。
というか、そもそも占いがやりたいのかと言われると、そうでもない。
やるとすれば、「人生相談」をやってみたいのである。
そう言えば、昔、八雲の理容店に入ったとき、話の流れから「ああ、あの人生相談の先生のところに行ってるんですか。」とマスターに言われたことがあった。
そのときは「近藤先生が人生相談か。」と思ったが、確かに人生相談でもある。
となると、「占わない占い師」、いや、「占わない師」でやるのが良さそうだ、という結論に達した。
占いはしないで人生相談だけをやる。
お客に酔っ払いは要らないが、ふらっとやって来る不特定多数の人を相手にする人生相談は、武者修行でいうところの野試合のようで魅力的である。
市井(しせい)の人の中に入って行くというのは、ガッカリすることもあるけどさ、やっぱり成長を求めている人がどこにでもいるんじゃないかという期待と希望は捨てられないんだよね。
いつか将来、自由が丘で私によく似た「占わない師」を見かけることがあったら声をかけてみて下さい。