「もうひとつ大事なことは、特に若い方、年寄りの方、両方に共通なことですけども、クライアントにやってるうちに、これは…いろいろ違います、違いますが、そこをじっと聴いているとね…やはりね、自分にとってもね、非常に教えられるところがあるもんですよ。ね。そこをね、よ~く自分でね、聴き込んで、そして自分に取り入れて行きますと、自分自身が、私は今年七十六ですけども、自分自身が、まだこれでもね、自分で取り入れて成長できるっていうことを感じますね。本当にね、ああ、そういうことに気がつかなかった、ね。私は…まだまだ年を喰ってないと。もう十年くらい、もう二十年くらいやらなきゃ、まだわかんないんじゃないかと。こういうふうなことも随分ございます。だからね、自分自身が、やっぱりね、それによって成長させていただくというね、気持ちも、ひとつ、持って、体験もされて行くんじゃないかと思います。
そのことがあると、これはね、自分自身が成長するっていうことがわかりますと、これはね、セラピストとして、あるいは、カウンセラーとして非常に進歩するんです。というのは、今までははっきりしなかったんだけども、相手も成長できるんだってことがわかる、ね。人間というものが成長する。相手がまた成長することによって、こちらがまた「あっ、これは自分も成長できるんだ。」ということがお互いにわかる。これで、ひとつだけ申し上げるのは、成長は、お互いに成長は無限にできるんだ、ということを、ここでやられる、体験されるあなた方カウンセラーは、すごく恵まれた方だと思うんです。
…ま
あ、このね、カウンセラーっていうのはね、私はね、よっぽど好きでなきゃ、やれた商売じゃないと思うんですね。今言ったような事柄を聴かれただけでもそうでしょうけども、私もね、これ、よっぽどね、好きでなきゃできない。とにかく余程、人間に対する愛情とかね、そういうものがないとできない。だから、自分のことを省みられて、私は自分はそれほどの人間に対する愛情は持たない、人のことはどうでもいいと、ね。自分のことが、まあ、どうやら喰って行けりゃあ良いや、というふうな気持ちでやってらっしゃると、そのうちに、この仕事はとても馬鹿馬鹿しくてイヤになって他所(よそ)のことをやりたくなりますから。まあ、そういう他所のことをやられれば良いんですけども、まあ、そういう意味で、私は、これは非常に忍耐を必要とするということを始めから覚悟して。それで、そういうものができないなぁ、そういうものをやるだけの価値がない、ということであれば、自分を知る上から言ってね、自分はもっとそれよりもNTTの株かなんか買ってですな、何百万円か買って、それで儲ける方が良いと、こういう方が適しているという人は、どんどんそっちの方に行った方が、僕は良いと思いますね。やはり、それぞれの人間の、それぞれの一生をかけてやることは、それぞれあるわけですからね。
…そして、それが本当に、私は少なくともこう信じる。人間は自分のために奉仕するということよりも、人のために奉仕することによって、もっと人間が、自分に豊かに奉仕することになる。こういう具合に私は思うんですね。ですから、やっぱり何よりも、教育もやってますけども、何しろ、人間の生命(いのち)を育てるということぐらい、人間の一番深い喜びはないんだろうと思います。」(近藤章久講演『カウンセリングを始める人への若干のアドバイス』より)

 

僭越ながら、師の言葉に今少し付け加えると、
まず「人間に対する愛情」ということ。
これは人間の力では無理だと思うんです。
だって凡夫は自己愛的なんだもの。
人のことなんて、二の次、三の次。自分が可愛くて可愛くてしょうがない。
でも、それが、自分以外の人間を愛せる場合がある。

また「人のために奉仕するということ」。
これもまた人間の力では無理だと思うんです。
だって凡夫は自己中なんだもの。
人の奉仕なんかやってられませんわ。むしろ私に奉仕しろっていうくらい。
でも、それが、
自分以外の人間に奉仕できる場合がある。

だけども、凡夫の自力では無理だけれど、
我々凡夫を通して働く大いなる力によって、それが可能になる場合がある。
人を愛し、人に奉仕できる場合がある。

人間の生命(いのち)の成長は、この世界の願い、この宇宙の願いなんです。
人間の生命(いのち)が成長するとき、この世界が、この宇宙が喜ぶんです。
ですから、「人間の生命(いのち)を育てるということぐらい、人間の一番深い喜びはないんだろうと思います」ということになるわけです。

 

 

お問合せはこちら

八雲総合研究所(東京都世田谷区)は
医療・福祉系国家資格者と一般市民を対象とした人間的成長のための精神療法の専門機関です。