昨日も触れた通り、「技術」「演技」「テクニック」を駆使するのが対人援助職だと思っているバカチンがいる。
あるドアホな女性精神科医は後輩に「臨床は女優だから。」と本気で言っていた。

そんな小細工は早晩、見透かされるに決まってるだろ。
クライアントをなめてはいけない。

それでは、対人援助職が「技術」や「演技」や「テクニック」を使うことが全くないのかというと、そんなことはない。
使うことはある。

例えば、私が大学病院にいた頃、小児科の病棟に白血病の子どもたちがたくさん入院していた。
そして病状が厳しくなると、個室=無菌室に行くということを子どもたちはみんな知っていた。
個室に移ったある子が看護師に尋ねた。
「僕、死ぬの?」

そんなとき、あなただったら
「そうだよ、君はもうすぐ死ぬんだよ。」
と言いますか?
そうは言いませんよね。
その子の「僕、死ぬの?」というのは決して質問ではなく、大丈夫と言ってほしいという願いだと気がつきますよね。
だから

「大丈夫だよ。きっと良くなるよ。」
と我々は言うんです。
でも、これはウソですよね。

あのね、愛のあるウソを「方便」というんです。

小手先の、自分がその場をちょろまかして切り抜けるための「技術」「演技」「テクニック」とは違うんです。
愛のないウソはただのウソであり、それは罪でさえ
あります。

たとえウソでもそこにこめられた愛が届くから、「僕、死ぬの?」と訊いた子どもの気持ちがちょっとだけ軽くなるんです。

緩和ケア病棟においても、もし患者さんから
「オレ、死ぬのが怖いんだよ。」
とか
「もう死にたくなっちゃった。」
などと言われた場合、スタッフは答えに窮してしまうことが多いといいます。
そんなときは

「〇〇さんはそう思うんですね。
と切り返す「テクニック」があるというのを聞いたことがあります。
心の底から
「バッカじゃないか。」
と思いました。
これまた、自分がその場をちょろまかして切り抜けるための「技術」「演技」「テクニック」の類(たぐい)なんです。
何故、誠実に衷心から答えないのか、患者さんのために。
患者さんが看護師に
「オレ、死ぬのが怖いんだよ。」や「もう死にたくなっちゃった。」というのは単なるコメントではなく、不安を少しでも軽くしてほしいという願いからですよね。
小細工はいいんです。
私ならこう答えます。
「そう言われてどう答えて良いのかわかりませんが、〇〇さんの気持ちが少しでも楽になることを心から願っています。」
と。

どうか間違っても、上記のセリフだけを真似しないで下さい。
愛のない模倣が相手に響くわけがないですから。

そしてもし心に愛があれば、どんなウソも、「技術」も「演技」も「テクニック」も、相手の生命(いのち)に響く「方便」となるのです。

で、それは一体誰の愛なんでしょうね。
私の愛? あなたの愛?
それについてはまたいつかお話しましょう。

 


 

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