たまには統計の話から。

2020(令和2)年に行われた患者調査によれば、受療中(通院中か入院中)の精神障害者数は614.8万人(通院586.1万人+入院28.8万人)に達し、特に通院患者数が急激に増えつつある(2017(平成29)年の通院389.1万人なので3年間でなんと約200万人!増えた(50%以上!増加した)ことになる)。

ちなみに、2020(令和2)年時点での日本の人口は約1億2,614万人であるから、およそ国民の20人に1人が受療中ということになる。
これは多い。

さらに、受療していない人も含めると、生涯に一度でも精神障害になったことがある人の数は1,900万人に達するという報告もあり、およそ国民6.7人に1人が生涯に一度は精神障害になるということになる。
これまた多い。

また、その診断内訳となると、少なくとも最近大都市圏で精神科クリニックを開業した幾人かの精神科医からの情報によると(こちらの方がタイムラグのある患者調査よりも“今”が感じられる)、いずれも「精神病圏」と言われて来た統合失調症や双極性(感情)障害(躁うつ病)などの患者さんが占める割合が減少し、初診の大半が適応障害や不安障害など「神経症圏」の患者さんが占め、まだ統計の実数には現れていないが「発達障害」が基底にある患者さんが相当数を占める印象がある、という話をよく聞くようになった。
これらは入院にも対処する精神科病院や地方の精神科医療の状況とは多少異なるかもしれないが、時代の方向性を如実に反映しているものと私は思っている。

言い方を変えれば、「薬」だけでは治らない患者さんが急速に増えて来ているのである(元々すべての精神障害が「薬」だけで治ると私は思っていないが)。
即ち、「神経症圏」の患者さんには「精神療法」が不可欠であり、「発達障害圏」の患者さんには「療育」や「心理教育」が重要である。

さらにさらに話を進めると、「診断」がつかない患者さん?も急速に増えつつある。
つまり、この人に必要なのは「治療」なのか、人間としての「教育」なのか迷うところで、
後者ならば、それは医療機関で医療関係者やることなのか、という問題である。

どんどん話が長くなりそうなので、私見を言っておこう。
私は「治療」か「教育」かを分けることなく、すべての人に「人間としての成長のための精神療法/人間教育」が必要だと思っている。
それが、事の善し悪しに拘らず、否応なしに求められる時代になって来たのである。
よって、医療関係者に求められるものも当然変わって来る。
「薬」だけ出していれば良いということにはならないし、
狭義の「治療」のためだけの「精神療法」「療育」「心理教育」をやっていれば良いということにもならない。
「専門的」な「知識」や「技術」だけでは足りないのだ(それだけなら受け売りである程度はできる)。
「人間の成長」に関わることのできる「人間」個人としての「力量」が要求される時代になって来ている、と私は思っている。
こう申し上げると、読者の方々の中には異論・反論もあると思うが、これが私の持論(確信)なのだからしょうがない。面々のおはからい、で結構である。
そしてこういった時代の方向性を片目で見ながらも、以前と変わらず私は、「人間としての成長のための精神療法/人間教育」の志を同じくする方々と出逢って行ければ、と願っている。

 

 

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