ある四十代の女性が、自分の問題を解決したいと面談に来られた。
それが彼女と母親との関係に由来することは明らかだった。
彼女の自分と向き合う覚悟がしっかりできていたこともあり、しんどい時期もあったが、やがて彼女は本来の自分を取り戻すことに成功した。
何よりもとても生きやすくなった。
しかし問題が起こった。
彼女の変化・成長に彼女の娘が付いて来れなかったのである。

お母さんが変になった。
だらしなくなった。

〇〇なんだからもっとこうするべきだ。
□□としての自覚が足りない。
そんなんじゃダメだ。
こうしなきゃ。

聞いていて彼女は苦笑した。
それはすべて自分が娘に言って来たセリフであり
自分がかつて母親から言われて来た言葉だったのである。

なんだか娘が母に見えて来ました。
娘をそんなふうにしたのは私なんですけどね。

娘より先に母親が成長すると、たまにこんなことが起こる。

娘をこうした責任の一端は私にあるので、娘もまた成長できるように時間をかけて付き合って行こうと思います。

聞けば、娘はまだ十七だという。
それなら付き合ってあげないとね。

それがもし二十歳を過ぎていたら、もう大人と大人。
で、自分がどう生きるのかは本人の責任ということになる。
愛情を持って見守りながら、責任を取り過ぎないでいい。
下手をすると、また新たな支配・干渉と取られかねないからね。

時に成長は自分自身の問題だけに終わらない。
後始末が必要になることもある。

 

 

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