「気づいてあげられなくてごめんなさい。」
気持ちの悪い言葉である。
これを子どもに対して言うのだったら良い。
自分の気持ちをうまく言葉で言い表せない子どもはたくさんいる。
大人が気づいてあげる必要がある。
これを発声や表出に問題がある人に対して言うのだったら良い。
例えば、寝たきりの認知症のおじいちゃんにいつの間にか褥瘡ができていた。
こちらが気づいてあげる必要がある。
しかし、健全な大人に対して
「気づいてあげられなくてごめんなさい。」
と言うのは失礼である。
あなたには自分の気持ちを表出する力がない、と言っているのと同じだからである。
そう言う人自身が、相手の言えない気持ちを察してあげることが良いことだと思っている臭いがする。
そして間違いなく、その人自身が、自分の言えない気持ちを相手に察してもらいたがる人なのである。
面倒くさい。
健全な大人は自分の気持ちを表出することができる。
万が一、何らかの生育史のせいで、自分の気持ちを表出することに難しさを感じるならば、
本人は、自分の気持ちを自ら表出できるように努力した方が良いし、
周りは、その人が自分の気持ちを表出するように応援する方が親切というものである。
「あなたの成長できる力をみくびってごめんなさい。」
どうしても謝りたいなら、そう言った方が適切かもしれない。