「私、男の人の前だとしゃべれないんです。」と言いながら、私の前でたくさん話す人。

「お医者さんの前だと緊張しちゃうんです。」と言いながら、私の前でリラックスして話す人。

「年上の人には何も主張できないんです」
と言いながら、
「次は来週の金曜日の4時に予約を絶対入れて下さいね。」
と笑顔で主張する少女。

ときどき私は誰?と可笑(おか)しくなるときがあるが、これらは私にとって最高の褒(ほ)め言葉なのだ。

ときどきエセ精神療法の本に、「セラピストは常に中立性を保て。」とか、「空気のような存在になれ。」といった大デタラメが書かれているが、私はそんな作為的な詐欺師や演出家になるつもりはない。

近藤先生は初対面で無限の安心を感じさせる人であったが、
「どうして近藤先生の前だと、みんな安心して話すんでしょうね?」
と訊かれて、
「木や石に向かって話しているような気持ちになるんじゃないかな。」
と笑顔でおっしゃっておられた。
私の実感だと、“木や石”ではなく“空や海”と言った方がしっくり来る。

先生を通して“はからい”のない大きく包摂される働きを感じるのだ。

私の境地なんぞ足元にも及ばないが、たまに頭記のようなことが起きただけでも有り難い気持ちになる。

それは私の手柄でも力でもないんだよな。

天を仰ぐ。

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八雲総合研究所(東京都世田谷区)は
医療・福祉系国家資格者を対象とした人間的成長のための精神療法の専門機関です。