今回が『感じる力を育てる』の最終回です。
「内部感覚とはどんな感じがするものか、それを味わうには、近くの神社か仏閣に詣でられるのをおすすめしたいと思います。普通、神社や仏閣には、長い参道や階段があります。これも、私たちの祖先の深い知恵と思いますが、この長い参道や階段を木立の間を抜けて歩いて行きますと、知らず知らずのうちにいままでのごたごたした頭の中の損得の世界を考えなくなり、歩いたり登ったりすることだけに心が集中していきます。
そして本殿や本堂に着いた時は、ホッとして立ち止まります。涼しい風に肌の汗も引き、何となくさわやかな感じになり、おのずから礼拝して柏手をうち、あるいは合掌する時、自分の体の内部に何ともいえないすがすがしさと落ち着きとを感じられると思います。その時の感じをよく味わっていただければ、私の言う内部感覚の一端がおわかりになると思います。…
内部感覚を育てる方法…として、いちばん簡単なのは呼吸を感じ、味わうことです。ゆっくりと息を吐き出して、息の出る感じをじっと体で味わいます。そして吐ききったところで、ゆっくりと息が体に入ってくる感じを味わいます。ここで大切なのは、息の出入に注意することではなく、体の中で味わうことなのです。
注意するのは頭の働きです。味わうのは、内部感覚ですから、無理に気張らないで、自然に体が気持よく感じるように行うことです。無理に気張るのは意識的になっているので、これも頭の作用です。気持よく感じるのは、内部感覚の働きです。…
そのほかに、自然にふれることによっても内部感覚は成長します。自然によって内部感覚が触発され発達するのは、内部感覚の性質上極めて当然のことです。なぜなら、ここで内部感覚というのは、自然の植物や動物の中に、自然全体の中に、生き生きと働いているものだからです。植物や動物は、言葉には出しませんが、全く内部感覚によって、そのままに、自然に生きているのです。ですから、しばらく打算や功利の思いを忘れて、自然の中に無心に身をひたし、心をゆだねましょう。その時、おのずから自然の中に働く生命のリズムによって、自分の中の内部感覚が触発され、その生き生きとした実感を感じることができるようになられるでしょう。
こうして親御さん自身が、自分で内部感覚がわかり、感じ、生きるようになりますと、子どもの中にある内部感覚の働きをすぐ感じとることができるようになり、子どもとのほんとうの共感ができるようになります。…
子どもの生命は、いつも伸びよう、伸びようとして、親の生命からの呼びかけを待っています。その呼びかけは、親の内部感覚で実感するものが、子どもの内部感覚に感じられることによって行われるのです。親は自分の内部感覚の声に耳を傾け、子どもの中に宿る生命を直視し、実感し、子どもの内部感覚に訴えることが望まれます。」(近藤章久『感じる力を育てる』柏樹社より)
自分の内部感覚を育てるための三つの方法。
ひとつは、神社仏閣への参詣。
ふたつめは、呼吸、私的にはできれば丹田呼吸。
みっつめが、自然に触れること。
このどれも皆さんに強くお勧めしたいと思います。
そしてまず親が、あるいは、対人援助職者が、自らの内部感覚を発達させて行くことが、やがて子どもの、あるいは、患者さん/利用者さんの内部感覚を発達させて行くことにもつながっていくことになります。
知識・技術偏重の時代、改めて、感じることの大切さを、それも内部感覚を感じることの大切さを再認識していただき、「感じる力を育てる」「子どもの生命(いのち)に呼びかける」「患者さん/利用者さんの生命(いのち)に呼びかける」という大事なミッションを実践していただきたいと心から願っています。
それが本書に込められた近藤先生からのメッセージでした。