久しぶりに所用で渋谷に出かけた。
出たついでに家人とランチのため店に入る。
今どきのスマホ注文で、テーブル上に小さな銀色の金属プレート。そこにQRコードが貼ってある。
たまたま座ったテーブルの反対側の端、しかも逆向きにQRコードがある。
しょうがないなと身を乗り出し、反対側にスマホを向けて、なんとかQRコードを読み取ろうとしたところ、家人がその金属プレートをひょいと持ち上げて、私の目の前に置いた。
あ、QRコードの金属プレートはテーブルに貼り付けてあったんじゃなくて、動かせたのね。

たったそれだけの出来事。
しかし、私にとっては結構ショッキングなエピソードであった。

自分にとってどんなに不便であっても、既に誰かによって設定された状況であれば、黙って、そしてしばしば多少の無理をしてでも、それに合わせようとするこの従順さ。
子どもの頃、親や大人たちに仕込まれた、相手や与えられた環境に無条件に合わせようとする奴隷根性が(もう完全に払拭したと思っていたのに)まだ私の中に残っていたのである。
出された靴になんとか足を合わせようとする習慣。自分の足に合った靴を要求するのではなくて。
あのとき、試しにその金属プレートに(動かないかな?と)触ってみるという発想が私にはなかったのである。

まだまだだな。
そしてこういうことは、次から気をつけてできるようになるのではなくて、考えなくてもパッと金属プレートに触り、自分の目の前にスッと置き直せるようになって初めて、自分以外の人間の奴隷でなくなったことがわかるのである。

忘れた頃に、こういう警告が与えられる。
精進、精進。

 

 

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