「大体、近頃の親御さんはともすると、『とにかくこういう方が得よ』とか『こういうふうにうまく横領よくやった方がいいわよ』と言われる方たちが少なくないようです。いまの子どもはそういう環境の中で育ってきているわけです。親が、夫婦どうしの会話の中でも、妻が夫に『あなた、そんな時もっと要領よく、うまくやるのよ』などと子どもの前で言っていれば、子どもも自然にそういうことを考えるようになると思います。
そういう功利主義が徹底すれば、人間関係も要領よくしたほうがいいことになります。親自身がその相手によって、ああしたりこうしたり、いろんなその時に応じたマスク(仮面)をつけた人につき合っているのを子どもは見ています。親は先生と会う時はこうで、隣の人と話す時はこうで…とその時の相手によって態度を変えています。
だから子どももこれにならって、親がうるさい時はいいかげんにきき流し、先生の前ではちゃんとするというふうにすればよろしい。一応そうして、その場その場をうまくやって、あとはとにかく自分で好きなことをやっていればいいという具合に、非常にうまく立ち回っています。そうした子どもは、親も安心し、先生にも受けのよい、いわゆる『いい子』が多いのです。…
考えてみれば危険や困難を冒(おか)して、自分の目的として追求するものに到達し、それを獲得することは人間の歴史とともに古く、昔から多くの人々がそうした冒険をして、その結果いろいろな方面で進歩や発展が達成されたのです。それは人間の生命力の力強い発言であり、それが文化を作り歴史を動かしたと言えるでしょう。一方で人間の気持には、安易で楽な生活を好み。狭くても安全な状態に執着する傾向があります。それがともすれば保守と沈滞と頽廃を産み出して、人間の生命力を弱めていくことになります。」(近藤章久『感じる力を育てる』柏樹社より)
世は功利主義の時代です。
コスパ(コスト・パフォーマンス)にタイパ(タイム・パフォーマンス)、要領よくやることが良いことです。
よって、功利主義的にやって得られるものは、皆さん、よく御存知です。
しかし、功利主義的にやっては得られないもの、むしろ非功利的にやらないと得られないものについては、余り御存じないように思えます。
危険や困難を冒す。地道な苦労を積み重ねる。自分以外の人のために時間とエネルギーを費やす。失敗や間違いから学ぶ。計算外、想定外の発見や喜びを見い出す。などなど。
安直に得ることで喜ぶのは我
苦労して得ることで喜ぶのは生命(いのち)
なのかもしれませんね。