2022(令和4)年8月22日(月)『臨床心理士の心理療法のトレーニング』

医師の研修に比して、臨床心理士の資格取得後の研修は、法的に義務付けられていない。

従って、場合によっては、即日開業し、その日から「専門家」と称して心理療法を行うこともできる。

これは一面、自由であるが、他面、恐ろしいことでもある。

資格取得前の臨床心理士養成大学院のカリキュラムでは、座学も実習も時間が限られているため、どうしても広く浅く触れるだけ、ということになってしまうのは避けられない。

それだけでは、全くトレーニングが足りないのである、心理検査でも心理療法でも。

特に社会人になってから臨床心理士になった人は、年齢的に最初からベテランに見えたりする。だが、中身は新人、青葉マークなのだ。

気をつけないと、初心者レベルのまま、我流のままで、固まってしまう恐れがある。

よって、日本臨床心理士資格認定協会でも、臨床心理士の資格更新制度を作ったり、臨床心理士の資質向上事業を行ったりして、資格取得後の生涯学習を強調しているのは、とても重要なことである。

しかし、そういった研修でも、特に心理療法においては、座学やケースカンファレンス、1対多のワークショップでは限界がある。

それだけでは、自分個人の「未解決の問題」や「成長課題」と詰めて向き合って行く場がない。

個人的には、本当に心理療法を行いたいのであれば、1対1のスーパーヴィジョンあるいは教育分析に匹敵するものが必要だと思っている。

それもやっぱり、いっちょ前になるには、毎週トレーニングを受けても、5年、10年の長い時間がかかる。

そしてそもそもが、心理療法の知識や技術だけでない、その人自身の「人格陶冶」「人間としての成長」なくして、心理療法はあり得ない、というのが私の立場なのである。

それには余計な知識や技術、そして我流の心理療法と言った手垢が染み付く前の、資格取得後の早いうちが良いんじゃないかなぁ、と思いつつ、

キャリアのある方でも、自分の心理療法に疑問を抱き続け、自分の「未解決の問題」や「成長課題」と向き合って行く姿勢のある方であれば、問題はない(現にキャリアのある方も来ておられる)。

要は、現行教育制度下では、私の言う、ちゃんとした心理療法のトレーニングは行われておらず、志のある方はどうぞ自ら道を求めるべし、ということである。

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