2022(令和4)年8月21日(日)『精神科医の精神療法のトレーニング』

現在の医学部卒業後の医師の研修制度では、まず2年間、臨床研修病院などで「研修医」として所定の「臨床研修」を受けることになっており、その中身は、内科、救急、外科、小児科、産婦人科、精神科、地域医療の研修からなっている。

目指すところとして、確かに「医師としての人格の涵養」と大上段に書かれてはいるが、現実には、各科の基本的な診療知識・技術の修得に明け暮れるのが実態であろう。

そしてそれが終わると、「専門研修」に進むか、大学院や医療行政分野などに進むことになる。

「専門研修」では、目指す診療科(内科、外科、精神科など)の「専門医」になることを目指して「専攻医」として3〜5年、研鑽を積んで行く。

よって、一人前の医者になるのに医学部卒業後、「臨床研修」+「専門研修」=計5〜7年を要することになり、医者でなくても、どの道でもいっちょ前になるには5〜10年かかるというのは妥当なところであろう。

そしてその「専門研修」の中でも、今回話題としたい精神科医の「精神療法」については、「専門技能」として「患者の心理を把握するとともに、治療者と患者の間に起る心理的相互関係を理解し、適切な治療を行い、家族との協力関係を構築して家族の潜在能力を大事にできる。支持的精神療法を施行でき、認知行動療法や力動的精神療法を上級者の指導のもとに実践する」(日本精神神経学会、専門医制度 研修プログラム整備基準)とあり、いかにも「技能」のトレーニングとして書かれている。

精神科なのに最初の「人格」の話はどこに行ったのかと思うが、ここからが本題。

その「人格陶冶」「人間としての成長」なくして、精神療法はあり得ない、というのが私の立場なのである。

「技能」は二の次、「人間」が第一。

そうなれば当然、自分の中の「未解決の問題」や「成長課題」と向き合って行くことになる。

それには、余計な専門的「知識」「技能」や我流の精神療法といった手垢がつく前の、研修医や専攻医などの早いうちが良いんじゃないかなぁ、と思いつつ、

キャリアのある方でも、知識・技術の精神療法に疑問を抱き続け、自分の「未解決の問題」や「成長課題」と向き合って行く姿勢のある方であれば、全く問題はない(現にベテランの方も来ておられる)。

要は、現行研修制度下では、私の言う、ちゃんとした精神療法のトレーニングは行われておらず、志のある方はどうぞ自ら道を求めるべし、ということである。

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