2017(平成29)年5月15日(月)『約束』
18年前、近藤先生に呼ばれた私と家内は、病院のベッドに仰臥される先生の傍らに座っていた。
あれこれお話した後、先生がおもむろに話し出された。
自分なき後、家内のことが心配なので、近藤宅で開業してくれないか、と。
そして、当時私が自分の開業を考えていることを察しておられた先生は
そのうちに立派に開業してくれればいいから、と付け加えられた。
この「立派に」という言葉が私の胸に響いた。
後の心配を託しながら、それが私の足枷にならぬかを案じておられたのである。
私は即座に答えた。
奥さまがお元気な間は、先生の御宅でやらせていただきます。
すると先生はバッと身を起こし、私の両手を握って
ありがとう
と言われた。
18年間、今も忘れられない光景である。
以上は、同席していた近藤家のNさんが証人である。
そして現実には、多くの方々が私なんぞより遥かに近藤家に尽力して下さり、今日がある。
それにしても、八雲での開業後、山あり谷あり、たくさんのことがあった。
しかし何があっても男と男の約束。
死んでも破れないものがある。
そして、奥さまが逝去された。
奥さまとの思い出も尽きないが、葬儀も終わり、ふと夜空を見上げて
先生、約束を果たしましたよ、
という思いが溢れた。
現在の面談室や勉強会を行う部屋(=待合室としても使用)は、かつて先生がセラピーを行われた場所である。
ご存知の方はご存知のように、場に何とも言えない力がある。
それは何ものにも換え難い、有り難いものがあるが、今回ひとつの転帰がやって来たと思っている。
まだ奥さまのご遺志は開示されていないが、現時点での私の気持ちとしては、早いうちに新たな事務所を探して移ることを考えている。
そう私に考えさせるものが働いている。
新たな運命が動き始めているのを感じる。